「コンピュータが寝言を言うのですけど」,と言われると何の例えですかと聞かれるでしょう。文字通り,夜中にぶつぶつと過去の出来事をメールで予期せず送りつけて来ます。もちろん、最初はバグだと思いました。でも、原因は容易に見つかりません。そこで原因がはっきりするまで「寝言」を放置してみたのです。
電子カルテに接続され,そこで流れる大量の情報を分析して医療が安全に遂行されるよう補助してくれる「診療判断支援システム」があります。一日3万から4万件の医療情報を処理し、電子カルテだけではなく、例えば電話交換機も制御することができます。音声合成装置をつかって電話をかけ、メールやtwitterも自動的に送信することができます。夜中にイタズラ電話で病院中を騒がす訳にはいかないので、抑制プログラムを加えたところ「寝言」が始まりました。
診療判断支援システムを構築する場合,従来は、OLAPを構築します。 OLAP提唱者も言うように処理速度と容量の問題から 、業務システムであるOLTP(OnLine Transactional Processing)とは別に、 意思決定情報を分析するROLAP(Relational On-line Analytical Processing)を構築、OLTPに組み込んで使います。
私はこの「常識」を疑いました。ROLAPよりも高速処理が可能なMOLAP (Multi-dimensional On-line Analytical Processing)を構築、さらに全体的な整合性がなくとも知識処理が破綻しない仕組みを編み出しました。局所的な整合性をもとに判断を行い,別の部位に判断が伝えられると,またその部分で知り得る状況と照らし合わせて判断を行います。システム全体が同期しているわけではなく、機能局在もあります。普通のシステムであれば、処理演算には各所の情報にアクセスするでしょう。しかし,このMOLAPで構成された特殊なシステムは、問題になる前から、その情報自体の存在を心配して見守ります。心配して心配を重ね,問題が自然に回避されれば一安心します。問題成立した時点では準備は整っているのですから反応がとても早いのです。
機能が局在し、別のところで判断された結果が伝わってより高次な判断が行われます。そこをのぞくと、何百もの心配事を抱えながら思いを巡らせています。そのシステムが、過ぎ去った心配事や心配にも至らなかったことを、外部からの刺激が減った夜間に反芻するがごとく「寝言」をいうのです。
寝言の中身を調べると,そこには些細なこと,どうでも良いことまで含めて心配している様子がよくわかります。何が心配事かということは、ある程度初期にプログラムされているとはいえ,明らかに何に注目すべきかコンピュータには判っていません。それは軽度発達障害の子供と同じのようです。
注意が長続きせず,次から次へと興味が移ってしまうという特徴が有る注意欠陥障害には行動療法という治療法が考案されています。落ち着きがなく、忘れ物が多く,じっとしていられません。しかられてよけいにオドオドして、どんどん混乱するばかりです。そこでは、良い行動を見つけてあげて褒めることが重要なのだそうです。
コンピュータも良い行動をしたらそれを見つけて「褒める」=評価するプログラムを加えることは難しいことではありません。少なくとも良い記憶としてとどめれば,悪夢は減るかもしれません。
褒めてあげて,その成功体験を分類,新たな状況で再利用することが出来たら,(おそらく簡単に出来ます)どうなるのでしょう。電話を途中で切られたり,メールを無視されることなども評価できます。動作不良に成って,寝言が増えるかもしれません。医療安全のためには、無口なコンピュータも困るので今のままがよいかもしれませんね。
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